5) 機能性高分子材料・機能性分子集合体

5-1) イオン性双連続キュービック液晶を用いた新規イオン伝導体

5-2) 異方的イオン伝導性ナノ構造フィルムの構築

5-3) 液晶性を有する機能性π共役分子の開発

5-4) 刺激に応じて発光色が変化する液晶材料の開発

5-5) フルカラー発光特性を示すイオン性液晶の開発

5-6) 導電性分子集合ファイバーの構築

5-7) レドックス活性を有する液晶の開発



5-1) イオン性双連続キュービック液晶を用いた新規イオン伝導体

扇型アンモニウムおよびホスホニウム塩は、自己組織的に三次元的なイオンチャンネルを有する双連続キュービック液晶構造を形成した。シンクロトロンX線散乱測定により、液晶状態における電子密度マップを構築したところ、イオン性のチャンネル部位が高い電子密度を示した。アニオン種の異なる二つの化合物について得られた電子密度マップにより、アニオンの存在位置を特定することに成功した。
(本研究は東京農工大学の大野弘幸教授・Sheffield大学のGoran Ungar教授との共同研究である)


イオン性双連続キュービック液晶を用いた新規イオン伝導体

代表的関連文献:

  1. Induction of Thermotropic Bicontinuous Cubic Phases in Liquid-Crystalline Ammonium and Phosphonium Salts
    Takahiro Ichikawa, Masafumi Yoshio, Atsushi Hamasaki, Satomi Taguchi, Feng Liu, Xiang-bing Zeng, Goran Ungar, Hiroyuki Ohno, and Takashi Kato
    J. Am. Chem. Soc., 134, 2634 (2012)
  2. Self-Organization of Room-Temperature Ionic Liquids Exhibiting Liquid-Crystalline Bicontinuous Cubic Phases: Formation of Nano-Ion Channel Networks
    Takahiro Ichikawa, Masafumi Yoshio, Atsushi Hamasaki, Tomohiro Mukai, Hiroyuki Ohno, and Takashi Kato
    J. Am. Chem. Soc., 129, 10662 (2007)

5-2) 異方的イオン伝導性ナノ構造フィルムの構築

液晶が形成するナノ構造の高度な組織化により、高異方性・高イオン伝導性の高分子イオン伝導材料を構築した。互いに相溶しない親イオン性(ポリエチレンオキシド)・疎イオン性分子部位(液晶性メソゲン)を構造中に有する液晶性モノマーの配向制御と光重合反応を用いた構造固定化により、ナノレベルで相分離した構造を持つ異方的イオン伝導性ナノ構造フィルムが構築できる。イオンを特定の方向に輸送するだけでなく、非常に高いイオン伝導性を示す(室温付近で10-3 S cm-1レベル)画期的な材料となった。

(本研究は東京農工大学生命工学科 大野弘幸教授との共同研究である)

Nanostructured ion-conductive film

代表的関連文献:

  1. Nano-Segregated Polymeric Film Exhibiting High Ionic Conductivities
    Kenji Kishimoto, Tomoyuki Suzawa, Tomoki Yokota, Tomohiro Mukai, Hiroyuki Ohno, and Takashi Kato
    J. Am. Chem. Soc., 127, 15618 (2005).
  2. Nanostructured Anisotropic Ion-Conductive Films
    K. Kishimoto, M. Yoshio, T. Mukai, M. Yoshizawa, H. Ohno, and T. Kato
    J. Am. Chem. Soc., 125, 3196 (2003).
  3. 液晶性の発現-分子自己組織化による超分子液晶の構築-
    加藤隆史
    高分子, 55, 591 (2006).
  4. 機能性液晶の新しい展開
    志村晴季, 加藤隆史
    化学, 61, 66 (2006).

5-3) 液晶性を有する機能性π共役分子の開発

有機半導体材料として有用なオリゴチオフェン分子に液晶性を付与し、一次元カラム構造を構築することに成功した。


液晶性を有する機能性π共役分子の開発

代表的関連文献:

  1. Columnar Liquid Crystalline π-Conjugated Oligothiophenes
    Takuma Yasuda, Kenji Kishimoto, and Takashi Kato
    Chem. Commun., 2006, 3399.
  2. Oligothiophene-Based Liquid Crystals Exhibiting Smectic A Phases in Wider Temperature Ranges
    Masaomi Kimura, Takuma Yasuda, Kenji Kishimoto, Günther Götz, Peter Bäuerle, and Takashi Kato
    Chem. Lett., 35, 1150 (2006).

5-4) 刺激に応じて発光色が変化する液晶材料の開発

せん断を印加する(こする)と、紫外光照射下での発光色が変化する液晶材料を開発した。発光部位としてピレン骨格を持ち、超分子構造形成のためのアミド部位とデンドロン型の側鎖を持つ液晶性材料を設計・合成した。この化合物は室温を含む広い範囲でキュービック相を発現してエキシマー発光に起因する黄色の発光を示したが、せん断を印加するとカラムナー相に相転移して青緑色の発光を示した。このような外部刺激で発光色が変化する材料はセンシングデバイスやメモリーなどへの応用が期待できる。


刺激に応じて発光色が変化する液晶材料の開発

代表的関連文献:

  1. Stimuli-Responsive Luminescent Liquid Crystals: Change of Photoluminescent Colors Triggered by a Shear-Induced Phase Transition
    Yoshimitsu Sagara and Takashi Kato
    Angew. Chem. Int. Ed., 47, 5175 (2008).

5-5) フルカラー発光特性を示すイオン性液晶の開発

電子ドナー性部位を電子アクセプター性カチオン部位に導入し、トリポッド型イオン性液晶を合成した。これらのイオン液晶は紫外線照射下で発光し、その発光色はドナー性、アクセプター性を変化させることで可視域をカバーすることが分かった。
(本研究は青山学院大学化学・生命科学科 長谷川美貴教授との共同研究である)


フルカラー発光特性を示すイオン性液晶の開発

代表的関連文献:

  1. Full-Color Tunable Photoluminescent Ionic Liquid Crystals Based on Tripodal Pyridinium, Pyrimidinium, and Quinolinium Salts
    Kana Tanabe, Yuko Suzui, Miki Hasegawa, and Takashi Kato
    J. Am. Chem. Soc., in press.
  2. Luminescent Ionic Liquid Crystals Based on Tripodal Pyridinium Salts
    Kana Tanabe, Takuma Yasuda, and Takashi Kato
    Chem. Lett., 37, 1208 (2008).

5-6) 導電性分子集合ファイバーの構築

電子活性分子の一次元的な集合により導電性ファイバーを構築した。テトラチアフルバレン(TTF)部位を有するアミノ酸誘導体は、水素結合を駆動力としてTTF部位が集積した自己組織化ファイバーを形成した。ドーピングによる導電性発現や異方的な液晶場のテンプレート効果を利用したファイバーの配向制御に成功した。

(本研究は東京大学新領域創成科学研究科 伊藤耕三教授との共同研究である。)

TTF fiber formation in LCs

また、電子活性分子であるカルバゾール部位を有するアミノ酸誘導体を合成した。この分子は、水素結合によりカルバゾール部位が集積した自己組織化ファイバーを形成し、配向した液晶場において異方的に並んだファイバーを形成した。カルバゾール部位は光導電性などの物性を示すことが知られており、異方的な電子機能が期待できる。

代表的関連文献:

  1. Electroactive Supramolecular Self-Assembled Fibers Comprised of Doped Tetrathiafulvalene-Based Gelators
    Tetsu Kitamura, Suguru Nakaso, Norihiro Mizoshita, Yusuke Tochigi, Takeshi Shimomura, Masaya Moriyama, Kohzo Ito, and Takashi Kato
    J. Am. Chem. Soc., 127, 14769 (2005).
  2. Self-Assembly of Carbazole-Containing Gelators: Alignment of the Chromophore in Fibrous Aggregates
    Kazuhiro Yabuuchi, Yusuke Tochigi, Norihiro Mizoshita, Kenji Hanabusa, and Takashi Kato
    Tetrahedron, 63, 7358 (2007).
  3. Liquid-Crystalline Physical Gels
    Takashi Kato, Yuki Hirai, Suguru Nakaso, and Masaya Moriyama
    Chem. Soc. Rev., 36, 1857 (2007).

5-7) レドックス活性を有する液晶の開発

レドックス活性を有し、電子アクセプターとして機能することで知られているビオローゲンに液晶性を付与し、カラムナー構造を有するレドックス活性材料を構築した。これらビオローゲンを還元すると、ラジカルカチオン種の生成に伴い、黄色から青色へと変化するエレクトロクロミズムを示した。


レドックス活性を有する液晶の開発

代表的関連文献:

  1. Viologen-Based Redox-Active Ionic Liquid Crystals Forming Columnar Phases
    Kana Tanabe, Takuma Yasuda, Masafumi Yoshio, and Takashi Kato
    Org. Lett., 9, 4271 (2007).

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